こちょこちょなお店 福岡旅行①

福岡の街は、本当にこちょこちょなお店がたくさんある。小規模の個性的なお店がたくさんあって、入りやすくて、フレンドリーで、心をくすぐってきて一人旅行でも楽しい。もちろん、一人歩きの寂しさはあるけど、この寂しさは珈琲の苦味みたいなもので、時空間の深みを味わいたいのなら、ついて回るものなんじゃないかと思っている。もちろん、二人でも三人でも深みは味わえる。味が違うんじゃないかなって。だから今日は一人味。

 

以前福岡に住んでいた時に通っていたお店、「ペトロールブルー」に今夜は行きたかったから、たくさんの看板達は見るだけ。そして開店時間を待ってペトブルへ。すごくいい感じのマスターは覚えていてくれて、私が彼の好きな映画を酷評したことも覚えていた 笑。暑くもなく寒くもない春の晴れた夕方、外の空気は薄紫色、小さな雑居ビルの窓の空へ向かって、伸びやかな音楽が解き放たれる。私のためにかけてくれた音楽、甘い薬草シロップとジンの飲み物、この店に通っていた頃に夢想したことはきっと何も達成されていない、なんて能力も魅力もない私だ。でも私はまだ生き延びていて、ただ日々をやりくりすることに幸せがあると言う感触を獲得しつつある。幸せだとは言わないけど、充分だと感じた。ペトブルは、他の店に置いてあったショップカード兼コースターで知って、誰に紹介されるわけでもなく来たお店。小さな小さなエレベーターに乗って、誰にでもオープンなお店に行く夜はいいよね。

 

時間は遡って、この日の昼間は8年程前に通っていた「大木戸」といううどん屋さんで昼食。福岡だけどこのお店は讃岐うどん。福岡のうどんも大好きだけど、今日は讃岐うどん。冷たい出汁の「冷やかけ」にトッピングは「ちくぼー」(竹輪と牛蒡を半分ずつ)。そうそうこれこれ。サラリーマンのお昼ご飯だからいつもそそくさと入ってそそくさと退散していた。でもうどん屋さんの店主が覚えていてくれて、10年ぶりくらいかな?と会計時に声をかけてくれた。すごい!マスクと帽子をかぶっていたのに、見分けてくれて感動した。この広い地球で見つけてもらった気分。心が震えた。この人はきっとみんなのことを覚えていて、こうやって言葉で表現してくれて。元気になっちゃった午後でした。

 

という具合でもう少し、福岡の夜は続きます。